Production Notes

企画~脚本作業

2018年に第63回小学館漫画賞少女向け部門を受賞した咲坂伊緒の『思い、思われ、ふり、ふられ』。岸田一晃プロデューサーは、東宝で『アオハライド』『ストロ・ボエッジ』を実写化していたこともあり連載スタート当初から着目していた。
「Wヒロインが物語を紡いでいく新しさはもちろん、恋だけにはとどまらない“今”の若者たちが未来に望む希望を得るために必死に葛藤する姿が描かれていて、咲坂先生でしか描けない唯一無二の少女漫画だと感じました。人のことを本当に大切に思い、願い、行動する。まさにタイトル通り『思い、思われ、ふり、ふられ』ということを映画にしたいと思い企画が動き始めたんです」
映画『アオハライド』でも咲坂作品を手掛けている縁から恋愛映画の第一人者である三木孝浩監督を起用。三木監督はオファーがあった当時を振り返り「僕は咲坂作品が大好きなので1〜2巻を読んでいて、この物語を実写化することを勝手に想像していたんです。その後、正式にオファーをいただくことになるんですが、10代の若者たちの心の機敏を繊細にすくい上げていく物語ということもあり、約2時間の映画に仕上げるのは難易度が高いなと。『ふりふら』は、自分に何が足りないのかもわかっていない若者たちが、自分自身と向き合うきっかけを与えてくれる作品なので、『アオハライド』とはまた違って、見ている観客に寄り添えるものにしようと思いました。プロデューサー陣と企画を進めていく中で、少女漫画の実写化が飽和状態に入っていることも課題に上がり、それでも我々は『ふりふら』を実写化したいという強い思いがあったので、“少女漫画映画の一つ先に行く”ということをテーマにしました」
原作の咲坂伊緒は、「映画『アオハライド』の後、次の連載がもし実写化されるなら、また三木監督にメガホンを執っていただくのが、私の夢でした」と話す。今回は実写・アニメ共に脚本のプロットから参加。「朱里をはじめキャラクターに込めた想いや解釈が誤解されないように、スタッフの皆さんに細かいポイントまでお伝えさせていただきました。私が各シーンに込めた想いが声のトーンで補えればいいなと思います」
「観客が見たいものを見たい技法で鑑賞する」という岸田プロデューサーらの発想から、史上まれにみる実写・アニメのW映画化プロジェクトとして、『思い、思われ、ふり、ふられ』は、こうして一歩を踏み出した。

キャスティング

実写化が決まり、キャストの人選が行われた。恋愛に積極的な1人目のヒロイン・朱里役を浜辺美波、朱里の義理の弟・理央役を北村匠海が演じることに。17年公開の映画『君の膵臓をたべたい』でも話題となった2人が再びタッグを組むということもあり話題にもなった。キャスティングについて岸田プロデューサーは次のように振り返る。
「映画『君の膵臓をたべたい』でご一緒した浜辺さんは、当時16歳ながら“生きる意味”をまっすぐに伝える姿が光りました。近年、天真爛漫な役をやることが多く、10代最後の集大成のこの時期に青春に悩んで、苦しみ、もがく、朱里役で新しい浜辺美波を見たいと思いました。微細な目線の演技が圧巻で、彼女が積み重ねてきたものが本作に詰まっています。北村さんは今回で映画4本目のタッグです。一見、モテて順風満帆な人生を歩んでいるように見えるが、実は大きな問題(影)を抱えている理央役は本当に難しい。北村匠海が演じる理央が作品の質を一気に上げてくれていると感じています。完成試写を見た彼が「めっちゃいいじゃん!」って言ってくれたときは嬉しかったですね(笑)」
さらに、恋に夢見がちなもう1人のヒロイン・由奈役を福本莉子、由奈の幼なじみ・和臣役を赤楚衛二が担当。フレッシュな2人については「最初は自分に自信がなく内気だが、どんどん前を向いて自分らしく生きていこうとする由奈。その成長していく姿を体現するため大きな役に初めて挑戦する福本さんにお願いしました。彼女が持つ芯の強さと負けん気、でもまだ経験がないからこその揺らぎが役に詰め込まれています。赤楚くんはキャスティングの際にお会いして、彼の天然なキャラクターと物事の考え方、役者業に挑む想い、すべてが和臣にドンピシャでハマったことが起用の鍵になりました。何事もないように見えて、一人で辛さを抱える和臣は赤楚衛二にしかできなかったと思います」と語った。

神戸でのロケ

一部のシーンを除いて、約1か月に渡りオール神戸ロケを敢行。朱里、理央、由奈、和臣が通う学校パートは兵庫県立神戸高等学校、啓明学院中学校・高等学校でそれぞれ撮影が行われた。初めて浜辺、北村、福本、赤楚の4人が揃ったのは啓明学院中学校・高等学校での撮影だ。朱里と理央が兄弟げんかをするシーンということもあり、浜辺と北村は三木監督とセリフのニュアンスや言い方を確認。撮影部と録音部らがセッティングをしている間には、浜辺と福本、北村と赤楚がそれぞれスタッフを交えて談笑する姿も見られた。
4人の気持ちが動く文化祭のシーンは、校内や門構えの雰囲気が良いことから兵庫県立神戸高等学校でロケを実施。教室や廊下には工夫をこらした外装・装飾が施され、中庭には本物さながらの模擬店が並ぶ。早朝からの撮影にも関わらず、中庭を行き交う生徒役のエキストラが多く参加することもあって、とても賑やかな雰囲気に包まれていた。しかし理央と由奈にとってはかなり重要な場面。由奈役の福本が気持ちを作るまで北村がしっかり付き合っていた姿が印象的だった。
撮影も後半に差し掛かった4月8日。この日は神戸三大神社の一社とされている長田神社で夏祭りのシーン。朱里役の浜辺と由奈役の福本は浴衣姿、男性陣も半袖の夏服姿に。クランクイン時に比べると暖かくなってきたとは言え、日も暮れ肌寒い中での撮影だったが、浜辺はお祭りの雰囲気や浴衣にテンションアップ。多くの出店が立ち並んだ現場は、エキストラの参加もあり、本物さながらの賑わいとなった。

浜辺×北村の切ない
キスシーン

『君の膵臓をたべたい』でもカップルを演じた浜辺と北村がキスシーンに挑戦。雨が降る学校の帰り道、和臣と朱里が急接近していることに焦った理央が、朱里にキスをする大事なシーンだ。地元の方々の協力もあり、何度も丁寧にリハーサルを重ねていく。雨の量や理央が持つ傘の位置など、三木監督からも細かな調整が入る。そして迎えた本番。冷たい雨が降る中で、2人が交わしたキスは、原作同様、胸締めつけられる切ないワンシーンとなった。一発でOKが出た後、雨で濡れてしまった浜辺と北村は、ストーブを囲んで寒さをしのんでいた。

撮影中のエピソード

三木監督にとっては『フォルトゥナの瞳』以来となる兵庫・神戸ロケ。映画の撮影現場と聞くとピリピリした空気と思われがちだが、三木組は常に穏やかな空気だ。それは中心にいる三木監督が常にニコニコした笑顔でスタッフやキャストに接しているからだろう。北村が王子様のコスプレを披露した文化祭のシーンでは、「恥ずかしい…」とこぼす北村に「似合ってるよ!」と声をかけていたり、多くの現場で経験を積んできた浜辺も「三木組はとても温厚で心地がいい」と話すほど。キスシーンや夏祭りなど重要な場面ではそれぞれキャストと話を重ねる姿も印象的だ。
また特に三木監督が目をかけていたのが、福本と赤楚の2人。告白の場面でなかなかうまく気持ちを作ることができない福本に対して、丁寧に由奈の心情を説明しに彼女のもとへ向かうことも。一方、赤楚には、理央役の北村とのセリフの間や声のトーン、シーンごとに表情などを細かく指導。きっと2人にとって成長に繋がる作品になったことに間違いないだろう。キャスト陣は同級生役ということもあり、あえて敬語を使わずに和気あいあいと会話を弾ませていた。まるで本当の同級生のように夏祭りに文化祭、そして恋と青春を謳歌していた。

青春ラブストーリーの
新たな金字塔が誕生!!

三木監督の手によって実写化された『思い、思われ、ふり、ふられ』。咲坂自身も連載時から12巻の少女漫画を2時間の映画にぎゅっとまとめるのは難しいと思っていたという。しかし完成した作品を見て、レベルアップしていたと話す。「今までの少女漫画の実写化のフォーマットの枠から外れていて、『ふりふら』の形を大切に撮っていただいたのが伝わってきて、すごく嬉しかったです。きっと誰もが1つくらいは青春時代にやり残したことがあって、それが要所要所にうまく散りばめられているから、大人の方にも刺さるのかなと。あともう一つ、印象に残った場面あって、三木監督にもお伝えした記憶があるんですが、北村さん演じる理央が「内緒」と唇に人差し指をあてるシーンで、北村さんが指を真っ直ぐ置いていなくて、少しずれているのが綺麗すぎなくてよかったなと思いました。インパクトがあったのか読者の方からも好きと言っていただくことが多いワンシーンなんですが、漫画ではきっちり書いてしまっていたので、印象に残りました。三木監督はもちろんのこと、浜辺さん、北村さん、福本さん、赤楚さん、そしてスタッフのみなさんが色々チャレンジしてくださったんだと思うと、より特別な作品になりました」